第11章 幻想叶は緑谷出久とおでかけする
「叶ちゃんがヒーローを目指すと聞いたときは驚いたけど、それはあの事件を乗り越えるという覚悟でもあったのよね。
でも、とてもつらいでしょう。今の症状は、叶ちゃんにとっての“ヒーロー”を思い出す度に連鎖して起きてしまうもの」
そう言って先生は私の頭を優しく撫でた
「でも…これはあなたにとって乗り越えなければいけないことなのよね?」
膝で固く握られている手に水滴が落ちた。
事件の後私は酷いフラッシュバックに悩まされ、本当に苦しい日々を送っていた。
日々の悪夢にうなされ眠ることもままならない。
食事ものどに通らない。
それでも生きていたのは、雄英高校を、ヒーローを目指してこれたのは
とても大切な目標があったからだ。
「ヒーローになるためには、あいつらに負けちゃいけない。あの時の弱い私のままじゃいけない。
だから、治したいんです。先生。」
そう言うと、斎藤先生は私を強く抱きしめてくれた。
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「おまたせ緑谷君、ごめんね遅くなって」
そう声をかけると緑谷君は心配そうにこちらを見た。
緑谷君には待合室で待っていてもらった。
「大丈夫?どうだった?」
「うん、大丈夫だよ、あとは薬貰うだけ」
そう言うと緑谷君はほっとした顔をして「そっか」と言った。
帰りの電車、土曜日のまだ早い時間だからかこの車両には私たちしか乗っていなかった。
「今日はありがとう、遠いのに付き添ってくれて」
そう言うと緑谷君は笑ってくれた。
そして少し黙ってから
「幻想さんはどうしてヒーローを目指してるの?」
そうわたしに純粋な顔で聞いてきた
「…え?」
いきなりそんなことを聞くから少し驚いてしまった。
それに気づいたのか緑谷君はすかさず
「あ、いや、いやだったら全然答えなくてもいいんだけど、気になって」
そう頭をかいた
「……憧れてる人がいて……」
そう言うと緑谷君は嬉しそうに
「僕も!幻想さんもなんだね!僕はオールマイトに憧れて雄英高校に入ったんだ!幻想さんは誰に憧れてヒーローを目指してるの?!」
そう興奮気味に私に言った
誰にって…
今の担任ですとか言えないし、恥ずかしい
どうしよう
「えっと、その……なんていうか」
「もしかして」
「相澤先生だったりする?」