第11章 幻想叶は緑谷出久とおでかけする
土曜日、私と緑谷君は電車に揺られていた。
私がお世話になっていた病院は雄英高校の最寄駅から1時間ほどで到着する。
それにしても…
き、気まずい…
いつもはお茶子ちゃんが間に入ってくれていたけど、
二人きりになると何話していいのか分からないな…
「幻想さん、幻想さん!」
そう声を掛けられハッとする。
「ここ、病院の最寄り駅だよね?もうつくよ」
そう言って電車内のモニターを指さす。
「ほんとだ、ごめんぼうっとしてた」
「全然大丈夫だよ!行こっか!」
そう緑谷君は笑った。
緑谷君、入学した時から思ってたけどすごく眩しい人だな。
強くて、根性があって、何より優しい。
ヒーローって感じがする。
______
診察室に入ると事件後お世話になった先生が笑顔で迎えてくれた。
「叶ちゃん!久しぶりね!少し見ない間に随分大人になって!でもちょっと瘦せすぎね、ちゃんと食べてるの?寮生活はどう?」
そう色々な事を一度に聞かれたので少し戸惑うと
「あら、私ったらごめんなさいね。久しぶりで嬉しくって」
そう目を細くして笑った。
この先生は斎藤先生。
事件後のカウンセリングや治療でとてもお世話になっていた。
「斎藤先生、お久しぶりです。私もうれしいです」
そう言いながら先生の向かいの席に腰を下ろす。
「手紙はたまにもらっていたけれど、顔を見れて嬉しいわ」
そういうと先生はカルテを手に取った。
「それで本題だけど、また症状が出てきてるのね」
そう言って真剣な顔になる。
「はい…雄英高校に入学してしばらくは収まっていたけど、最近眠れない程ひどくなっていて」
そう言うと先生は私の顔を優しい顔で見つめた。
「フラッシュバックは完全に克服するのは難しい…さらにその時のことを思い出すことによって悪化してしまうのよね」
そうだ…分かっているけど、私はあの時のことを思い出さずにはいられない。
イレイザーヘッドとの出会いは忘れることができない。