第9章 相澤消太は教師である
【相澤消太side】
職員室に戻るとなぜか幻想とマイクが肩を組んで話をしていた。
心なしか幻想も嬉しそうにしている。
それを見て何故だか少し腹が立った。
「…おいマイクお前さっき何話してたんだよ」
「何って、別にイレイザーには関係ないぜ」
……。
「って冗談冗談!!幻想宛のはがきを渡してやっただけだって!!!」
俺が睨むとマイクは慌てて弁明した。
「…どんなだよ」
「ったく、普通に子どものお礼のはがきだよ。迷子助けたんだって」
「そうか」
幻想そんなことしてたのか。
理由が分かった俺はひとまず自分の席に腰を下ろした。
少し間が空いてから、マイクが珍しく低いトーンで俺に話しかけてきた。
「…イレイザー、お前こそあの子に随分肩入れしているのに気づいてないのか?」
「…は?」
一瞬言葉の意味が分からずマイクの顔を凝視してしまう。
「俺が、幻想に?なんで?」
俺は別に幻想に肩入れなんてした覚えはないが。
「幻想のことになると、なんか妙な顔つきになってるよ、お前」
そう言ってマイクは真剣な顔で話を続けた。
「あいつの個性もお前と同じ見ることで発動する個性だ、それ故に一対一の肉体戦には圧倒的に不利。様々な状況下で戦わなければいけないヒーローという職に就くには酷かもしれない」
その通りだ。
俺は幻想に感じる違和感と共に、あいつがヒーローを目指すということに懸念を抱いていた。
目をふさがれればただの無個性になる。
プロヒーローになればそういう最悪な状況は否応なしにやってくる。
俺はヒーローになって何度もそういう状況になったことがあるが、
何とかそれを乗り越えられた。
だけど、幻想は?
幻想は死んでしまうかもしれない。
俺はあいつの個性にも、あいつが見せる掴めない雰囲気にも。
自分の学生時代と重ねて
心の底で、たまらなく不安になっていた。
1年A組の担任として出会った時から俺は、
あいつのヒーローを目指す背中を押してやっていいのか分からない。
いっそ、諦めさせた方が…