第4章 代償
「もう、消えて」
1度でも絡まった糸は、もうもとには戻せないんだ。
「ふたりして、あたしの前からいなくなって」
1度でも絡まった糸は、ほどこうとすればするほど。
きつく絡んでいく。
もうもとには。
戻せないんだ。
「…………バイバイ、れんくん」
ボー、と。
低迷していた意識が浮上する。
違和感を、感じた。
美桜の笑顔。
消えちゃいそうな、笑顔。
もう絶対気付かなかったなんていいたくなくて。
美桜へと預けた、視線。
は。
たぶんきっと。
最悪な事態を結果的に引き起こした。
「待って美桜!!」
「離してっ!!」
別になんにも、する気なんて美桜にはなかったのかもしれない。
ただ、美桜が向かった道の先に階段がある。
なんとなく嫌な予感がして、美桜の腕を掴んだ、瞬間。
思い切り振り払われた腕は反動で、体をぐらつかせる。
「━━━━━━━桜月……っ!!」
そのまましりもちを着いた、先に見えたまぶしい光。
振り返った瞬間に見えたのは。
眩しすぎる車のヘッドライト。
と、もう1つ。
安易だった。
軽率だった。
うかつ、だった。
全部あたしのせい。
あたしが、ボーッとしてたから。
あたしが。
「━━━━━━れんくんっっ!!さーちゃんっ!!」
ものすごい高音の、ブレーキ音。
転がった、バイク。
聞こえた美桜の、悲鳴。
ぼんやりと身体を起こせば。
掌にぬるっとした、感触。
と。
あたしを覆う、あったかい、ぬくもり。
「え」
「れんくんっ!!れんくんッッ」
すぐそばで聞こえるはずの美桜の悲鳴がすごく遠くに、感じて。
両てのひらについた、血液をただただ、見つめた。