第2章 行き当たりばったりの旅
「これが、ラーメンってやつかい。しげみちもよく食べていたっけね。宇宙人の食べ物を僕に食べろと?」
「食わず嫌いはよくない!てかさ、ラキオもお腹すいてるでしょ」
「まあ、僕としたことが、いつものサプリを飲み忘れてしまったからね…。それにしても、空腹になるっていう感覚は何だか奇妙な感覚だ。イートフェチはよく分からないな」
「旅行の日に限って飲み忘れるなんてね〜…お腹すいてたらたしかに物足りない〜って感じだよ。だけど、お腹すいてる時に食べるご飯が1番美味しくて好きなんだぁ」
「『美味しい』ね……」
慣れない手つきで割り箸をわり、
麺を持ち上げる。
「はむっ………んっ…むう…」
長い麺を箸でつまみ口に含むが上手く食べれていない。ズルズル音を立てないようにしているのか。
「ズルズル〜って、吸うの。ラーメン食べる時は音立てるんだよ」
私が見本を見せるようにちゅるちゅると麺を啜る。ラキオはむぐむぐと麺を頬張り、引いた目でこちらを見ていた。
「ただでさえ好きでもない食事をとらされているというのに、そんな下品なことできるわけないだろう」
「んー…あ、じゃあさこうやって食べてみて!」
私はレンゲを左手に持ち、スープを少々、そして麺を少しすくい上げレンゲに入れて食べて見せた。
ラキオもそれを見ながら真似をした。
音を立てて食べたくないという人や、
麺が長くて食べにくい、という人には
この食べ方がオススメかもしれない。
ラキオはこの食べ方の方が性にあうらしく、黙々と行儀よく食べはじめた。少量とはいえ、スープも1滴残らず飲み干した。
「どう?美味しかった?」
「何度も思うけど、普段食事をとらない僕に味の感想を求めるのもおかしな話だよ。僕にとってはただの固形物の栄養素。…あと余計な脂質とね。それでしかないよ。宇宙人の好物にしちゃ贅沢な代物だとは思うけどね」
ラキオのことだ。本当にまずければ、一口食べてすぐにこちらに返してくるはずだ。