第1章 前日
「ラキオ、今週末、良ければ一緒に遊ばない?気分転換にでもさ」
毎日毎日机に向き合いっぱなしのラキオに声をかけてみた。彼は振り向くこと背中で聞いていた。まあ、ここまではいつものことだ。
「遊ぶって…何するつもりなンだい?内容にもよるよ。言っとくけど僕は暇じゃないからね」
「今週末は学校も仕事もおやすみ…でしょ?たまには別の惑星行って、気分転換とかどうかな〜って」
ラキオは椅子をくるりと回転させて
ようやく私の顔を見た。
否、見下した?といった方がいいのだろうか…
「フン。僕とデートがしたいってのかい?あいも変わらず頭が高いね。何度も言ってるだろう、僕は汎だ。が望むような要求に応えることはできないよ」
「え、デート…!?良ければ他の子も誘おうかなぁとか思ってたんだけど…」
「っ…!!!」
明らかに動揺していた。
ラキオとは恋人(っぽい関係?)になってもう数ヶ月経つけれど、未だに素直じゃない。若さ故の思春期に近いものなのか、彼の生まれ持った環境で作られた性格なのか…。恐らくどちらも正解だろうが後者が大きいかもしれない。
彼には素直になって欲しいという気持ちもあるが、何だかんだこのあまのじゃくな性格も可愛いと思っている。
まだ18という若さだ…厳しく苦しい星グリーゼにはない、色々なものに触れて少しでも楽しいことをさせてあげたいのだ。
「えーと、私はどっちでもいいよ!…もちろん2人でもいいし…どうしたい?」
彼の中で『恋人』って意識を持ってくれてると思うとすごく嬉しかった。けど私は気を使ってラキオに質問で返す。汎性だし、この性格だし、私のこと女の子として好きになってくれるとは思ってもみなかった。
「フン!だけで充分うるさいのに、これ以上人を呼ぶとか新手の嫌がらせかい?」
ようするに、『2人っきりがいい』ということだ。
そういうとラキオは眉間に皺を寄せてムスッとした表情でそっぽを向いてしまった。そっぽを向いていても照れているのが分かるのは、耳まで赤くなっていたから…これもいつものことだ。
なんて可愛いやつ。
だけど、墓穴を掘ったのはラキオの方だし。
「じゃあ人は呼ばずに二人で遊ぼっか。それでいい?」
「君がどうしても二人で行きたいというのであれば、聞いてやらないこともないよ…」
「やったー!ありがとうねっ」