第1章 晩御飯の後にオトナは運動する事があるらしい
「水割り三杯じゃ酔い足りねェよ。おまえで酔わせて」
片付ける私の後ろに、いつの間にか銀時がいた。
私の寝る場所は銀時の布団。抱き込まれるようにして眠る。最初はソファーだったのに、いつからかそうして眠るようになった。
「寝る準備してから行くよ」
離れない銀時に動きづらいのを我慢して洗面所へと向かい、銀時の口にも歯ブラシを突っ込む。
鏡越しで自分を抱きしめる銀時に見つめられながら、歯磨きを続ける。一種の拷問だと思う。
口いっぱいになった泡を捨てようと鏡の銀時から視線を逸らした瞬間、
グイッ!
銀時に顎を捕まれて動きを阻止された。
話せない口を引き締めて抗議するように斜め後ろを睨むと、にやーっと銀時が意地悪そうに嗤った。
「銀さんが磨いてあげよう」
「ん゛ん゛ー!!」
試みた抵抗も軽々と封じられ、閉じた口に無理矢理歯ブラシを出し入れされ、口の中の泡が口角から溢れ出す。
首を左右に振ろうとも、歯ブラシのせいで口から泡を漏らす失態をこれ以上見せたくなくて、下手に動けない。
ピッタリとくっつく銀時の下半身に硬い違和感を感じて、恥ずかしくて目をギュッと閉じた。
「はい、終わり」
じっと見られていようが早く口の中を出したかった。
洗面台に両手を着いて上半身を少し前に屈めた私の腰を、銀時はまた後ろから抱きしめてくる。
「、銀さんちょっとヤバい。酒飲んでんのに元気なんですけど」
「お酒足りなかったのかなー?飲み直そうか?」
「も飲むってんならな」
今歯磨きしましたけど。少しだけイラッとした私は、銀時の口から飛び出した歯ブラシを乱暴に動かしてやる。
そのまま、口をすすいだ銀時に横抱きにされて敷いてあった布団へと運ばれた。
仰向けに横たえられた身体を覆うように銀時が被さり……
――神楽の大きないびきが響いた。
「雰囲気台無しだな。せっかくも乗り気だったのによぉ」
脱力した銀時の全身が覆いかぶさってきて重いし苦しい。
「大丈夫。明日も二人は早いだろうからもう寝よ?」
銀時に両手を回して甘えて頬を擦り付ける。上半身を起こした銀時は柔らかく微笑み、
「ムリ」
·····大人の運動は避けられないようだ。