第1章 1
「ま、いっか。」
そういうと呪霊はするすると拘束をといた。
「え……殺さないの?」
「それも考えたんだけど、ちょっと興味あること試してみようかなって」
呪霊がこちらに向かってくる。
すると
ぎゅうっ
と、抱きしめられた。
「俺の術式はね、俺と、俺の触れた人の魂の形を変えられるんだ。君も、こうして触れれば変えられる。」
耳元でソワソワと喋られ、背筋が凍る。
これは術式の開示…。
「何を企んでるの。」
「ふふふ、その怯えた顔いいね。」
呪霊はニヤニヤと笑って私に顔を近づける。
「でもね、今は魂の形を変えずに君のその怯えた顔、もっと見てみたいと思ってさ。絶望で歪んでいく顔、態度…。俺君のことちょっと気に入っちゃったみたい。ねぇ、名前教えてよ♡」
「嫌」
「えーケチー。じゃあなんか持ってるでしょ、生徒の証明書みたいな……。あった、そうそう手帳。🌸ちゃんね。苗字はー…知らないや、大したことない家?」
「は…」
「あは、ごめんごめん。怒った?ふふふ、それじゃあちょっと移動しよっか。」
逃げ出してもさっきの二の舞。
今は大人しくしておいて、策を練ろう……。
しばらく歩くと、廃ビルの地下室のようなところに連れてこられた。
中は少々埃っぽいが綺麗だ、奴…もしくは仲間もいて、連中が使っているのだろうか。
「質問に答えるまで拷問ってこと…?」
「そういうのもアリだけどー…今俺が興味あるのはぁ……人間の性行為♡」
性行為…?呪霊にそんなもの必要ないし、性欲があるとも思えない…。
「不思議そうな顔しちゃって可愛いね。ふふふ、だからさっきも言ったけど、君の歪んだ表情が見てみたいっていうのと、ただの興味。俺、人間の呪いだからそういうコトに関する知識だってあるんだよね。」
そうか、人間の呪い…。ここまで人に近い呪霊なのも頷ける。
それに人間のそういうことに関する感情が呪いに転移することも全く不思議ではない。