第2章 思春期は理解不能
沖田side
「おばちゃん、団子三本ねィ」
俺はかぶき町の馴染みの団子屋の椅子に腰掛け、「お待ちどうさま」出された団子を一口頬張る。じんわりと甘みが口内で広がり「さん、ここの団子好きだったけ」なんて考えた。壁の掛け時計に目をやれば、見廻りの時間はとっくに過ぎている。
今頃女上司は俺と廻るはずだった市中見廻りを一人でしている頃だろう。
ここに居続ければ時期に見つかると分かっているのに、この場所に留まっている俺。"見つけて欲しい"と思う心情が見え見えで笑えてきた。
──… うっせーのが来たんで食欲失せやした
でもない顔をして接してきたさんに苛ついて出た言葉。半分八つ当たりに近いガキじみた自身の行動。反省はしていない。むしろしたくない。けど、胸を占める罪悪感は確実に彼女に対して抱いている感情で、俺は苦しさを吐き出すように息を吐いた。
── 『"銀時"──ッ 』
── 『っ…やっと、会えた…のにッ』
脳内でチラつく表情、声、涙。
走り出した彼女の後を追った俺が見たのは…男と抱き合っていさんの姿だった。
「……ッ」
彼女の涙を拭い取り、引き寄せる男の姿を思い出せば胸の苦しさが増し、チクリと痛みまで感じる。
何故俺がここまで考えなければいけないのか。あの女が何処のどいつとどんな関係でも俺には関係ない。
そうだ、関係ない
(のに、なんでこんなに…いてェ、んだ)
全部アンタの所為でさァ──。
気付けば最後の一本になった団子。それに手を伸ばしかけた時、ザッと土を踏む音と共に真横から考えの中心の人物の気配を感じ、勢いよく首を向けた。
『ハァハァ…探すの、苦労したんだからな』
走っていたのか、息を切らしながらおっかない顔をしたさんがやっぱり立っていて、気まずさから逃げようとすれば伸びてきた手によって首元のスカーフが絞め上がった。