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マヨネーズから油を抜いたらどうなりますか(土方夢)

第1章 仮の居場所


「俺ァ、土方死ねが良かったんだけど。どうも合言葉でもそんな事言いたくないっつー隊員がいたらしい」
 
「誰だろうねィ?」とニヤニヤとこちらを見る総悟の表情で、その隊員が自分であると確信してるのを悟る。その話題に乗る事はせず、淡々とした動作で押収した証拠品のダイヤを袂から取り出して総悟に渡す。キラキラとしたダイヤを人差し指と親指に挟んで、総悟が夜空にかざす。
 
「これがブルースターダイヤモンドの贋作ねェ。ガラスなのかダイヤなのか違いがサッパリわかんねーや」
「被害届出した天人は取り下げたんですか?」
「散々自慢してたモノがニセモノだったってェ事で大きな声で言えないらしい。ま、こっちは引き換えに取り下げの要求するだろうがねィ」
 
 総悟はポケットにダイヤ風のガラスをねじ込むと、目の前の塀の上に「よっ」と軽々と乗った。
 
「んじゃ。俺ァ先に戻ってるぜィ」
 
 を残し、総悟は塀の向こうへ消えた。も引き返して追手と鉢合わせる訳にはいかない為、総悟の後を追うようにしてその場を後にした。
 
 
 ✱✱✱✱✱
 
 
 真選組屯所に戻ると、山崎退がを笑顔で待っていた。
 
「。諸士調役の任務成功、おめでとう!」
 
 諸士調役とはすなわちスパイの事で、今回のダイヤ奪回は、組におけるの実績を作る為に割り振られた初任務だった。
 
「国宝レベルの物を盗まれたってのは戦争の理由になるからね。それを防げた功績は大きいよ!」
 
 一緒に潜入していた退のフォローがあってこそ、身軽で足の速いがダイヤを持って逃げながら敵の目を欺くのに成功したのだが、『無表情と寡黙を標準装備』する事を義務付けられているは頭を退へ深く下げるに留まった。が表情があまり変わらず、無口な人間だと思っている退はにっこりと笑うと、の肩をポンと叩いて「戻って来た事、副長と局長に報告に行きなよ」と告げて去っていった。
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