• テキストサイズ

マヨネーズから油を抜いたらどうなりますか(土方夢)

第1章 仮の居場所



「……自分がそんな姿をするのが想像がつかないだけで、羨ましくは無いですね」

 迷いのないの瞳に見上げられ、土方は大きな掌でその瞳を隠すように頭をポンと撫でた。
 
「行くか」
「はい」
 
 多くを語らないの太刀筋に、土方は武家の生まれだと見当をつけていた。所作が綺麗なのは旗本などの上級の生まれか。だが、政略の道具となる一族の女を探している武家の気配はない。
 
 ――あの日、雨の中傘もささずに真選組を訪れたはすでに男物の着物に身を包み、まだ長かった髪は高く結われていた。
 一振の刀も持たず、びしょ濡れの小さな風呂敷ひとつを手にしたは深く頭を下げて入隊を希望した。
 
『どんだけの腕があるか、ちょっくら見てやりやすか』
 
 沖田が鞘のついた刀を地面に投げ、の指先が刀に触れた瞬間、勢いをつけて刀を頭上に振り上げて斬りかかった。
 真選組の面々が固唾を飲んで見守る中、は冷静に鞘で沖田の太刀を受けた。
 沖田の視線との視線が交差する。
 近藤はそれだけを見届けると、パンパンッと大きく手を叩いた。

『うちの隊長の不意打ちを冷静に受け止める根性!良いだろう!』
『……まァ、試用期間は必要だろうがな。総悟、部屋に案内してやれ』
『だとよ、山崎。あとは頼んだぜィ』

 その後、山崎がに色々と教える事になっていたが、がどの隊員よりも素直だった為、いらぬ事まで楽しそうに細々と説明する山崎の姿が所々で見られた。
 
『山崎に任せて大正解でしたねィ。流石俺』
『結果オーライなだけじゃねーか!』

 柱の陰から沖田と土方がの言動を注視していた。
 
『しかし、笑いやせんね。アイツ』
『…誰も笑った所を見た事がないらしいな。一番近くにいる山崎すら見た事がないっつってたぜ』
『土方コノヤローが目の前で死ねば笑うと思いやすぜィ。それも大笑い』
『楽しいのはてめェだけだ。このサイコ野郎が』

 笑顔の山崎と無表情の。それでも、真摯な態度は山崎を初めとした隊士に次第に受け入れられていった。
 
 
 
/ 8ページ  
エモアイコン:泣けたエモアイコン:キュンとしたエモアイコン:エロかったエモアイコン:驚いたエモアイコン:なごんだエモアイコン:素敵!エモアイコン:面白い
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp