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マヨネーズから油を抜いたらどうなりますか(土方夢)

第1章 仮の居場所



 
 
 複数の気配に追いかけられていたは夜の街の雑踏に紛れ込んだ。

 手にしていた紙袋からコートと帽子を素早く取り出し、飲み屋の前で集団で立ち止まる人達の陰でそれ等を身に着ける。
 元から着ていた男物の着物の上にコートを羽織り、目深に帽子を被り、ゆったりとした歩き方に変えるだけで、は紳士にしか見えなくなっていた。
 店のメニューを見ているかのように装い立ち止まると、後ろから走ってきた男達がを追い越していく。道行く人々に自分からぶつかっては『どこに目ェつけてんだ!』等暴言を吐きながら。
「なんなんだい、あいつら」
「まぁ、治安が悪いこと…」
 嫌悪感を顕にする周囲の人達に倣い、も粗野な男達の背中を見送り、完全に男達が見えなくなってから横の路地へ入った。
 あれだけ表の通りは賑やかなのに、路地に入ると途端に人気がなくなる。喧騒に背を向けてが歩き続けると行き止まりにぶつかった。ここがの目的地だ。
 
「……土方のあれに真珠……」
 
 風に消されそうな小さな声でが呟く。誰が考えたのかわからない、くだらない合言葉だ。いや、誰が考えたのか大体予想がつく。
 
「やれやれ。このくれェの合言葉で恥ずかしがるんじゃ、この先が思いやられるぜィ」
 
 の言葉に応えるように、行き止まりの壁を越えて男が目の前に降ってきた。着地して顔をあげた男は、自分が与する隊の隊長・沖田総悟だ。
 
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