第3章 拝啓 父上様
拝啓、どこかの基地で働いているお父さん、天国にいるお母さん。
私、は今日、18歳になりました。
誕生日休暇など存在しないのがこの業界。とはいえ基本交代制であるし休憩は任意で取れる。その上、上司は話が通じる人なのでシフトもかなり融通が利く。
つまりはいつでも目当ての部屋に行けるはず、だったのだが。
「どうしてこういうときに限ってDC残党と戦闘になるかなあ!?」
哨戒部隊が潜伏していた敵部隊を発見してから戦闘になるまでそう時間はかからず、その上相手が地の利を活用して撹乱する作戦に出たものだから思わぬ損傷が出た。
「仕事は好きだけど、怪我は駄目ですよ!」
「すまん」
「もー、キョウスケ中尉だからその程度で済んだんですからね」
負傷しては上官だろうが年長だろうが形無しである。ましてや純粋に心配されているのは理解しているのでキョウスケは大人しく説教を受けた。
の機嫌を損ねて修理を後回しにされては困る。
「これから報告に行くが……伝言はあるか」
「整備報告は班長がします」
「……飴をやろう」
「ご機嫌取りしなくて結構です!」
と言いながらもレモンキャンディを受け取って口に放り込む。甘酸っぱさが頭をすっきりとさせた。
「中尉って飴食べるんですか?」
「……アレを黙らせるのに使う。」
なるほど、と納得して同じ手を食わされたことに少しだけ憤慨する。まあ怒りたくて怒っているわけではないし、これ以上尉官に抗議すべきではないだろう。
「では後は我々に任せて中尉は報告へ。」
「了解した。」
さり気なくもう一つの飴を握らせてキョウスケは格納庫を後にした。