第6章 もしドラマCDのアレがテツヤだったら
電子警告音にテツヤは飛び起きた。
目を開いてから今は自室待機中で仮眠を取っていたことを思い出す。
「どうした!?」
すぐさま通信回線をブリッジに繋げる。聞きなれたアヅキの声がまだ寝惚けの残る耳に入った。
『L5宙域にて大規模な重力反応感知しました』
「何っ!? 空間転移か……通信は?」
『繋がりません』
「了解。 半舷休息解除して目標地点へ急行する。 すぐブリッジへ向かう!」
『了解!』
通信を切ってブリッジへ走る。寝起きのためか上着がなくても体が温かく、その分妙に重く感じるがのんびりはしていられない。自分がいなくてもそつなくこなしてくれるクルーではあるが、責任を負うのはあくまでも自分でなければ。
「待たせた!」
自動扉を潜ると同時に再び警報音が鳴り響く。
緊急時とはいえ、緊急時だからこそ一つのミスも許されない。
テツヤは慎重に状況を見極めながら指示を飛ばした。
結果として戦闘にはなったものの大事には至らずに済んだ。とはいえまだ安心はできないので戦闘配備は解くものの警戒は怠らない。
「あの……艦長」
それでも幾分緊張が薄れたところでようやくクルーの一部は艦長の異常に気づいた。当の本人だけが冷たい視線に面食らっている。
「ん? どうした?」
「……背中に何か張り付いてますけど」
「何っ!?」
代表してエイタが言えば、道理で重かったはずだと振り返る。が、張り付いているのだから当然見えない。
「何コントみたいなことやってるんですか」
「ええい! しかしこの重さ……だな!」
「艦長、突っ込みどころに困ります」
指摘しながらもエイタは上司の背中に張り付いた同僚の腰を掴んで引き寄せた。今の今までしがみついていたとは思えないほど抵抗がない。
「よいしょっと……って寝てるし」
「三徹とか言っていたからな……預かろう」
だからと言って大の男の背中に張り付き続けるとは普通考えられないが、まあそれをテツヤに追求しても仕方がないとエイタは早々と諦める。
部下の気持ちなど露知らず、テツヤは奪い取るようにしかし丁寧にを横抱きした。
「すまん、寝かせたらすぐ戻る」
「一応聞きますけど、どちらへ?」
「? 俺の部屋だが」
やっぱり一緒に寝てたんだな、と思ったが誰も口には出せなかった。
