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テっちゃんといっしょ!

第1章 腹括れ


そんなテツヤの胸中など露知らず、は胸元に己の手をやって首を傾けた。
「年頃の娘がそんなことを言うんじゃない!」
思わず母親のような口調で叱る。いくら周囲の同年代の男女にカップルが多いとはいえもう少し貞操観念をしっかりと持ってほしい。
「だからテっちゃんにしか言わないってば」
頬を膨らませて見せる姿は可愛い。可愛い故に厄介だ。
それにいつまでも曖昧なままにしておくわけにもいかない。そもそも彼女を部屋に出入りさせている自分が一番はっきりしていない。
黙って答えを待つを見下ろし、テツヤは言葉を慎重に選んだ。
「あのな、……俺はもう29なんだ」
「仕事中は敬語だよ?」
「そういう話ではなく……はいくつだ?」
「18」
「まだ誕生日が来ていないだろう。つまり12歳差だ」
数字を聞くと眩暈がする。子どもっぽく振舞うことも、大人びて見えることもあるが彼女はまだ若いのだ。
「だから?」
不服そうなの頭を撫で、諭すようにテツヤは続けた。
「こんな30近いおじさんじゃなくて、もっと同じ年頃の」
「いや!」
遮って再びテツヤに抱きついたは硬い腹部に頭を摺り寄せた。
「私はテっちゃんがいい! 年上でも万年二番手でも生真面目で奥手でもむっつりスケベでもテツヤがいいの!」
「む、むっつりって……」
「どうしたら本気になってくれるの?」
大きな瞳がじわりと濡れていくのを見て何かが揺らぐ。
年が離れているとか彼女にはもっと相応しい人がいるとか、結局のところ自分に自信がないだけなのだとテツヤにはわかっている。
本当は誰にも渡したくないのに。
「……誕生日」
「え?」
「さすがに18にならないと示しがつかないだろう」
「それって……」
の表情が少しずつ悲しみから喜びに変化していく。その笑顔を隣で見れるなら、腹を括るのも悪くない。
「それから! 俺はむっ、胸の大きさには拘らないから、あまり気にしなくていい
「わかった。 テっちゃん大好き!」
「その呼び方はやめてくれ……それから。」
明後日の方を向き、わざとらしく咳払いをして小さな声で言った。
「俺も好きだ」
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