第1章 組織で生まれた子
ベルモットはその質問がが自分がジンとかつて関係があったことを知ってだと分かった。
「違うわ。私とジンがそういう関係にあったのは昔だけだから。私が心配なのはのことよ」
「私?」
「まだ高校生でしょ。しかもジンよ」
「うん。自分でもいい事だとは思ってないよ。でも苦痛じゃないの。きっとお互い利用してるだけだよ」
「利用?」
「楽しんでるだけってこと」
の表情は至って淡々としていた。がジンに好意を寄せているようには見えなかった。
「だから心配しないで」
「なんかあったら言いなさい」
「うん。分かった。そろそろ学校行くね」
の後ろ姿を見てベルモットの表情は明るくはならなかった。
が傷ついていたりしていなかったのはいいもののあそこまで冷淡としているもどこか不気味に感じるのだ。生まれた場所が組織だったからか、は昔から感情に乏しい。だが無感情という訳では無い。優しく笑う時もあれば悲しみで涙を流す時もある。だが今のように感情が見えない瞬間が成長するに連れて増えたようにも思える。
もうは自立できる年になってきた。ベルモットもほとんど面倒を見ることはなくなった。
社会に出て困ることは無いだろう。あの子は振る舞いの仕方を分かっている。
でもベルモットは心配だった。素の感情が見えなくなりつつあることに。
あと気にかけるとしたらジンへのへの想い。ジンは少なからずを特別な存在として見ているだろう。しかしはそうではないらしい。いつかその関係が崩れ始める時にどちらかが壊れないことをベルモットは祈るばかりだった。
は高校を卒業して東都大学に進学した。
一人暮らしをすることも無くアジトから大学に直接通っていた。
そして数年前から組織にはある1つの噂が流れていた。
カーディナルとバーボンは仲が悪い。
しかし多くの人がの性格と容姿からしてその噂は嘘だと思っていた。
「近づかないでもらえますか、本当は貴方に会いたくもないので」
今日もまた、バーボンの目はカーディナルに冷たかった。