第1章 空前絶後
「儂はこの忍術学園の学園長じゃ。大まかな事情は六年生から聞いたが、この世界の者では無いということじゃな?」
私が目を開け心身落ち着かせるまでどうやら待っていてくれたらしく、敵という訳では無いが油断も出来なそうな相手に対して優しい等と生温く思ってしまった。そしてここはどうやら忍を育成する為の学校であり、木の葉の忍者アカデミーと同じ様な所らしい。
「私はと言います。
にわかに信じ難い話ですが、私がこの世界の者ではないということは事実です。そしてそれを証明する手掛かりとなる物とすれば、この首に巻いている額当てですかね」
額当てを取り、学園長と呼ばれる老人に手渡した。
「ふむ。確かにこの額当ても真ん中の木の葉の印も見たことがない。ここの者ではないというのは、信じていいかもしれん」
「大して素性も分からぬ曲者同然の私にそう言って頂き誠に感謝します。ですが私は帰る方法が未だわかっていません。なので暫くはこの世界で帰れる方法を探しながらこの時代で上手く生活しようと思います」
「そうか!ならこうしよう!」
と、閃いた表情で言う学園長に周りに居た数人の教員らしき人々が“またか”と言うような何とも形容しがたい表情で溜息をついていた。
「お主が元の場所に帰れるまで、ここで暮らせば良い!」
「…は?」
思わず漏れてしまった返答が失礼なのは百も承知。しかし人間の脳は予想もつかない頓狂な事を急に言われでもすれば一瞬脳が正常な働きを失い思考が止まるものだ。だから仕方ないのである。
教員らしき人を見れば大体が額に手をやり“やはりな”と表情で物語っている。
「いや、流石にそれは出来ません。私の勝手に巻き込むことになりますし、私が言うのもあれですが、忍が簡単に素性のわからぬ者の言葉を信じるのはどうかと」
「その言葉を鵜呑みにして居ないけれど、私の大切な生徒を助けてくれた事は事実よ」
声がし、静かに天井裏から降りてきた首にピンクのスカーフを巻いたくノ一だった。
「貴方が助けたくノ一はユキちゃんと言って、私のくノ一教室の生徒なの。彼女から話は全て聞いたわ。ありがとう」
そう言って教員でもある彼女が丁寧に頭を下げお礼をしてきた。
「頭をあげてください、私はただ自分で助けたいと思って行動した迄ですから」