第1章 空前絶後
「そうですか…お答え頂きありがとうございました」
質問の答えが“いいえ”の時点でここが異世界である確信を持つことが出来た。だから後は元の世界に帰る方法とこの世界を多少調査し、戻った際に綱手様に伝えようと思う。
深緑の装束の彼等は互いに顔を見合わせて一般人では聞こえないであろう会話をしている。
本当に此処にもう要はないと踵を返して立ち去ろうとすると
ーダダダダダッ
(………はぁ)
今度はなんだと思い、こちらに突進してくるような勢いで着実に近付く足音を耳でキャッチする。
「お姉さん!やっと追いつきましたっ!」
「…わざわざ追いかけに来たの?」
そこにはここに飛ばされて直ぐに遭遇した山賊に襲われかけていた町娘だった。
「にしてもその格好、やっぱりくノ一だったのか」
町娘の服装は先程と違いピンク色の女性用装束に身を包んでいた。
襲われかけていた時必死に浴衣を脱ぐタイミングを計っていたし、その下の装束に暗器なども隠し持ってそれで応戦しようと想像したが当たっていたようだ。
「まだくノ一の卵ですけどね」
そう言ってはにかむ彼女。
「ん?君は確かくノ一教室の子じゃないか」
どうやら深緑色の装束の彼等と町娘元いくノ一の子は知り合いの様だ。彼女が彼等に襲われかけたところを助けていただいたことを話したようで、そのお陰か彼等の殺気も幾分か緩んだ。
「まだお姉さんにお礼出来てませんし、何よりお姉さんの体術がかっこよくて是非ご指南を受けたいと思います!」
そういいくノ一ちゃんは(可愛いからちゃん付け)キャッキャ恋愛話を楽しむ様にはしゃぎ私に愛の告白紛いな事を言ってきた。
それを自分含め彼等もぽかんとした表情で見ていた。
「まあ、くノたまもこういってる事だし、先程の質問内容も我々には理解出来ん。お前がまだ危険すべき人物だということに変わりはないし、学園長の所まで連れていく」
“異論はないな”サラ艶髪の彼が他に語りかけそれに賛同したようで、目付きの鋭い彼といけいけどんどーんと何故か楽しそうに独り言を言っている彼が両サイドで私の腕をもち歩き出す。