第10章 自問
家って?
家ってやっぱり、え?
櫻井さんの、ってこと?
それっていいの?許されるの?
「あの、大丈夫ならだけど」
「いや、いってもよろしいのですか?」
「ははっ、なんでそんな丁寧語なの?」
電話の向こうで、楽しそうに笑う
櫻井さんの声が聞こえる。
ああ、……櫻井さんだ。
会いたいな。
伝えたいな。
やっぱり私、貴方が好きだわ、櫻井さん。
「行きます!お邪魔します!」
「うん!わかった。じゃあ、」
そこでふと思った。
バレたらダメだって。
櫻井さんと並ぶ所をみられたら
絶対櫻井さんに、迷惑がかかるから。
「場所、教えてください」
「え?」
「向かいますから」
「いいよ、迎えにいくから」
「大丈夫です!」
そしたら、「うーん」と唸られたけど
一度小さな咳払いが聞こえてから、
「じゃあ、とりあえずタクシー拾って?」
と言われた。
私は、大きな道で、手を挙げた…………。
「はい!」