第10章 自問
「あの、です」
「あ、え、あの……」
「さ、櫻井さん?」
「いや、ごめん。
まさか電話くれるなんて、
思ってなくてさ」
照れてるんだ。
私なんかの電話に、
出てくれることからして嬉しいのに。
嬉しすぎるよ。
「今、局の前なんですけど」
「え!?」
「会えませんか?」
「……ごめん」
「ぇ」
断られた。
もう、手遅れってこと?
「いや、あのさ、今ね」
「あ、いえ、ごめんなさい。
こんな時間に、迷惑ですよね」
一方的に遮った。
だって、もしかすると、
他の女優さんとかと一緒なのかも
……しれないし。
「すみません、今の取り消「家!」
「……はい?」
急に言葉を重ねられた。
「家に、来られる?」
「ええ!?」
思わず声が裏返って、
周りから注目を集めてしまった。
とりあえず、落ち着こう私。