第3章 夢じゃなかった
「俺、任務だからもう行くわ。」
五条さんが立ち上がり、箱を渡される。
受け取った箱を見ると透明に戻った。
「夜は肉用意しとけよ。」
「はい!…え、お肉…?」
それだけ言って部屋を出て行ってしまった背中を見つめる。
お肉、夜ご飯の話だよね?
担当の人居ないって言ってたから夜ご飯も作らないといけないのか。
「悟、霧乃さんの料理気に入ったんだね。」
「私等が作るより美味いのは確かだしな。また頼むよ。」
「頑張り、ます!」
「先ずはこっちから頑張ろうか。」
「…頑張ります。」
箱を指差し笑う夏油さんと硝子さん。
再度手に力を込めて箱を包む。
先程と同じ様に箱が色付く。
「そのまま、さっきみたいに臍から呪力を体全体に循環させて。」
「…出来てますか?」
「出来てないね。うーん、自分の中に呪力がある感じはするかい?」
「…しないです…」
「さっき私の手を辿った時は、どんな感じだった?」
「さっきは…手が当てられた所に順に力を入れて行くような感じで…」
「呪力の自覚はない、かな?」
「ピンとこない、です。呪力が何なのか…」
夏油さんは黒板の前に移動してチョークを手に持つと、何かを描き出した。
人の形をした絵を描くと中心辺りに円を描く。
「この円を呪力の源として、これを身体中に巡らせる。呪力自体は呪霊が見える見えないに関わらず全ての人間に存在してるんだ。呪霊が見えるという事は何かしらの能力を持っている。霧乃さんなら反転術式になるね。」
「呪力があるって事は誰でも術式を使えるようになるんですか?」
「いや、一生見えないままの人の方が多いよ。危険に晒されたり特殊な状況で見えるようになるパターンはあるけど。基本的に幼少期に自覚する事が殆ど。」
「そもそも呪いも、力を持たない人の負のエネルギーが身体から出た呪力と合わさって呪いが生まれるんだ。」
「私も呪いを生み出してるって事ですか?」