第6章 Teddybear
「あのー…すいませーん!…おーい!さーせーん!」
「んん……」
迷惑そうな声が聞こえた気がして目を開ける。
しかし目の前にあるのはクマと、そしてそれを挟むようにして夏油が寝息を立てているだけ。
なんだ夢か…
そう思ったのも束の間。
その声の主に気が付く。
「いい加減苦しいんすけどー?!
暑苦しいし!なんやねんこの状況はっ!」
「っ…!!!…は…?」
クマが喋っている。
しかもめちゃくちゃ可愛い声だ。
やはりこれは夢だったか…?
そう思ってレイは自分の頬をパシンと叩いた。
痛い…しかもクマはモゾモゾと動いている。
「おいこら!動けねぇ!はよどかんかいっ!」
口が悪すぎて目を丸くするが、ハッと我に返って急いで夏油の体をゆすった。
「傑っ!起きて傑!!やばいことが起きた!」
「…ん……?…んん?…なに、どうしたの…」
夏油は片目だけ開けてゆっくりと上半身を起こした。
ようやく隙間ができたクマは瞬時に布団から這い出て2人を交互に見る。
「おいらの名前は…クマだっけか?で、お前らの名前は確か… レイと傑?で合ってるか?」
夏油は驚愕の表情を浮かべた。
「な…な…おいレイ?これは一体…」
「わかんない…私もこの子の声で目が覚めた…」
しかしこれは紛れもなく現実で、そして成功の証。
「や…やったよ!やったよ傑っ!」
「あ、あぁ…よかったな!レイは天才だよ!」
「いや傑のおかげだよ!寝ている間も一緒に呪力を流してくれていたから!」
そう言って抱き合う男女にクマは不機嫌そうな声を出した。