第6章 Teddybear
「ほら、早くせんか。いつまでやってる」
「あっあの!パンダと相性の良い動物はどれですかね?」
「…なに?」
「せっかくなら、夜蛾先生のパンダくんとも仲良くなってほしいんです!」
そう言って笑みを零すレイの隣にいくと、夜蛾はおもむろにクマのぬいぐるみを掴んで差し出してきた。
「え…クマ?ですか?」
「パンダはクマの類だろ?違ったか?
パンダはクマで、クマはパンダ…
まぁ何にせよ似た者同士のほうがいいだろう」
「…はい」
よく分からないが、そういうことにした。
「でっでもっ!私にできますかね?パンダくんみたいに意志を持たせる呪骸を作ることが…」
「はなからそこまで期待していない。
言ったろう?パンダは突然変異呪骸だ。だからお前は普通の呪骸を作れるようにさえなればいい」
呪骸は本来、高い戦闘能力を持つことに加え、人形であるが故に痛覚や恐怖心を持っておらず、殴られても怯むことなく襲ってくる。
かなり強い味方にはなってくれるはずだ。
「だがな、もしかしたら神無月ならばその過程でそのクマをパンダのようにできそうな気がするんだよ。」
そう言って夜蛾は自分の執筆した分厚い本を何冊も渡してきた。
さすが、傀儡呪術学の第一人者といったところだ。
レイはみるみるやる気に満ち溢れた表情を滲ませた。
「私頑張ります!ずっと弟が欲しいと思ってたんですよ〜」
冥冥の弟みたいに、姉様!なんて言わせてみたい。
そんな妄想をしてしまった。
「…弟ね…まぁいい。途中で投げ出すなよ。
人形が可哀想だからな」
「はいっ!パンダくんに負けないのを作ってみせます!」
クマのぬいぐるみと何冊もの本を大事そうに抱きしめて微笑むレイに、夜蛾の肩の力はどこか抜けてしまった。