第6章 Teddybear
夜蛾先生はその夜、ある場所へと案内してくれた。
そこにいたのは…
「え?!なんですかこの愛らしい子は?」
「見ての通り、パンダだよ。」
「いや…それは分かりますけども…
お名前は?」
「だからパンダだ。ちなみにオスだ。」
「・・・」
レイの目の前には今、玩具で遊んでいるなんとも愛らしい小さな赤ちゃんパンダがいる。
「か、かわいい〜!ぱ、パンダくん…こんにちは」
しゃがみこんで頭を撫でてみる。
見上げてくる大きな2つの瞳に自分の綻んだ顔が映る。
「こんにちは!」
突然言葉を発したので驚いて目を丸くし、動きをとめた。
「しゃ、喋った!?」
「こいつは突然変異呪骸。本来呪骸は己の意思を持たないが、こいつは喋るし感情も持っている。俺はこのパンダを最高傑作に育て上げるつもりだ。」
夜蛾はどこか得意げにそう言った。
皆と同じように生徒として高専で指導し、どこまでも強い呪術師に育て上げるらしい。
「初めて会った頃、お前は俺の術式や能力と似た素質があると、俺は言ったな?
そこでだ。神無月、お前も傀儡呪術学を学べ。」
「えっ?!」
たしかに初めの頃、人形や物に呪を篭めて操ることが先天的な能力として合っているとは言われた。
しかし人形を使わないでいたのは、いくら魂が入ってないとはいえ単純になんだか可哀想だったからだ。
夜蛾は何食わぬ顔で棚に覆いかぶさっていた布をバッと取り去った。
そこにはたくさんの愛らしいぬいぐるみが飾られている。
「好きなものを選べ」
「え…そんないきなり言われてもっ…
しかも…」
どれも可愛すぎて選べない!
犬、猫、うさぎ、クマ、ライオン、かっぱ、あざらし、などなどなんの動物でも揃っている。
やはり顔に似合わず夜蛾先生は可愛いものが好きらしい。
しかしもともと優柔不断なレイはぬいぐるみを取ったり戻したりを繰り返すばかりで一向に決まらない。