第40章 scene ■
「ねぇ…もしもあの時に戻れたら、
レイはどうする?」
天井を見上げたまま、2人でぼんやりと考える。
「僕はね…多分…
あの時言えなかったことを…言うかな…
ふふ…失敗するってわかってるけどね。
ただ…素直になりたかったな…」
過去は常に、今から見れば美しく思える。
過去が楽しいのは、過去が今ここに
ないからに過ぎない。
「私は…正直言うとね、あの頃も…
すごく楽しくて、幸せだったよ。
これ以上はないって思えるくらいに…」
「…僕もそうだったよ…
だからかな…。
過去を塗り替えられればいいのにと
思うことがあるんだ。」
「私もあるよ…でも…そんなことは不可能…」
「そ。だからね、僕は…
"過去に負けない今"を作りたいんだ。」
静かでゆっくりと紡ぐ言葉の奥には
悲痛の表情がある気がした。