第40章 scene ■
まるで、縋り付く子供のように胸に顔を埋めている五条に笑いながら呼びかける。
「さーとーるくん…」
「……うん。」
「悟…」
「……うん。」
「ふふっ、さと」
「レイ」
「?」
「好き。結婚してくれない?」
「…………え…」
「あ…ごめん…」
何事も無かったかのように五条が離れた。
そして何事もなかったかのように触れるだけのキスをし、
何事もなかったかのようにまたスマホを見ている。
レイは真顔のまま固まる。
……さっきの何?
聞き間違い?だよね…
「あ〜やっばいよなぁほんっと、レイの和服姿って。今の浴衣姿もい〜し〜…」
またレイだけをアップにしながら五条は感嘆している。
そして、ポツリと小さく呟いた。
「……懐かしいな……あれも見たいなまた…」
「・・・」
もしかして…私と同じことを思い出しているんだろうか?
とレイは思った。
「…ねぇ、悟…もしかして…
あの日のことを思い出してるの?」
五条はスマホからレイに視線を移し、切なげに笑った。