第1章 ruby
「開けてみてよ」
感極まっているレイに、夏油はたった一言そう言った。
可愛いリボンを丁寧に剥がし、息を止めてゆっくりと箱を開ける。
中には、真っ赤な宝石が1つ輝いていた。
夜空の月と星の光が照らしているせいもあるだろう、あまりの美しさに目を奪われる。
おずおずとそれを手に取ると、ピアスだということが分かった。
「…わぁ、き、綺麗。
いいの?こんなに高そうなもの貰っちゃって…」
誰かにプレゼントなんて貰ったのも生まれて初めてで、戸惑いすら感じてしまう。
「っは、今更返されても困るよ。
レイは肌が白いから、ルビーが似合うと思ったんだ。ほら、付けて見せてよ。」
そう言って夏油はレイの髪をすくって耳にかけた。
レイは嬉しそうに目を輝かせながら耳たぶのピアスを1つ取ると、そこにルビーを装着した。
鏡がなくても慣れているので、流れるようなその動作に夏油は複雑そうに笑った。
「ね、どお?」
さすがにルビーが埋め込まれた自分を見ることは、鏡がなくてはできないので、代わりに夏油に聞くしかない。
「うん。いいな、想像以上に。」
彼の優しく細まった目を見てから、レイはきちんと礼を言った。
「本当にありがとう。ずっとずっと大切にする。
これだけは使わないように、ずっとピアスとして、お守りとして、したままでいるね。」
その言葉を夏油は真剣に否定した。
「いや、これはいつか使ってほしいんだ。そのために渡した。私の呪力も少し混ぜられている。君の身が危ない時に、必ず使ってくれ」