第1章 ruby
「…なぁ、今何時だ?」
突然そんなことを聞かれ、急いで腕時計を確認し、思わず声を上げる。
「えっ!もうこんな時間だと思わなかった!
0時回っちゃってるよ!」
時計の針は、0:04を指していた。
まぁ別に、かと言って何を焦る必要もないのだが。
寮にだって、呪術を使えば音沙汰なく勝手に出入りできることはできるし、門限だってあってないようなものだ。
五条悟なんて、自分よりもしょっちゅう夏油とぷらぷらしている。
それに少しばかりレイが嫉妬していることを、2人は知らないだろう。
「日付変わっちゃったか。本当は0時ピッタリに渡そうと思ってたんだけど。」
「…え?」
ようやく耳から手が離れていったかと思えば、夏油が懐から小さな箱を取りだし、レイの手に乗せた。
「っな、なぁに?これ…」
驚いたように箱から視線を上げると、夏油は目をなくすように弧を描き、にっこりと笑った。
「誕生日おめでとう、レイ。」
「おっ…覚えててくれたの?…1度しか言ったこと…なかったのに…」
驚きだった。
出会ってすぐに、身分確認のために1度だけ聞かれて答えただけ。
はっきり言って、自分でも忘れていたくらいで、今言われて思い出したくらいだ。
それくらい、今まで生きてきて誕生日なんてものは無縁だった。