第5章 possession
レイは硝子を部屋に寝かせたあと、一旦自室で寝巻きに着替えて歯を磨いてから再度夏油の部屋に行った。
ゴミは五条に持っていかせたらしく、何事も無かったかのようにとても綺麗になっている。
夏油は布団の中へレイを引き込んだ。
「ふふ…あったか〜い」
好きな人の腕の中でこうして包まれて眠れるなんて幸せだ。
「大丈夫だった?悟には何もされてない?」
レイは、うん。とだけ言った。
手を繋がれたこととか意味深なことを言われたことなどはもちろん言えない。
でも…なぜそんなことを聞いてくるのだろうか?
と思った。
夏油はゆっくりと髪を撫でてくれている。
レイは胸に顔を押し付けながら静かに言った。
「夏休み楽しみだなぁ。あ、でもさ傑、実家に帰ったりしなくていいの?」
そうだ。忘れていた。
私には帰る場所や会いたい人はいないけれど、傑も悟も硝子も、実家に帰りたいはずだ。
自分に気を遣わせてしまっては悪い。
「んー?別に実家なんて近いしいつでも帰れるからわざわざ行かないよ。」
「えっ、でも傑の家族は会いたいんじゃない?少しでも帰ってあげたら?」
「じゃあレイはどうするの?」
「どうするって、私はもちろんずっと高専にいるよ」
夏油はレイの後頭部を更にグッと引き寄せた。
トクトクと一定のリズムを刻む夏油の心音が、なんだか子守唄みたいで目を閉じる。
ゲームを長時間していたせいか、随分と目が疲れていて、かなりの睡魔が襲ってきていた。