第40章 scene ■
宿に戻り夕食を摂ったあと、2人と1匹で部屋の個室露天風呂に入った。
夜景が最高すぎて、湯の温かさとともになんとも言えない幸せな気持ちに包まれる。
「はぁ…やばい。気持ちよすぎる…
このままなんにも考えずずっとこうしてたい…」
レイはついそんな本音を呟いてしまった。
「懐かしいな、それ」
「…え?」
突然のクマの返しにポカンとする。
クマはぷかぷか浮かんで星空を眺めている。
釣られてレイも上を見上げた。
星がチラチラと瞬いていて三日月が出ている。
その煌々とした光に目を細めた。
「昔な、そういうセリフを言った奴がいた。
おいらはそいつの腹の上で、こうして空を見上げてた」
「あ〜それ僕じゃない〜?
海行った時っしょ?僕の腹に乗っかってずーっと浮いてたもんね?あ!まさか僕以外の腹の上でそんなことやってないよね?!」
「てめぇ気持ち悪ぃ嫉妬心出すな!」
五条の言葉に、レイはあの頃の夏休みの記憶をすぐに思い出した。
確か…皆で海に行って…
私は…ずっとあの人といて…
あの頃は本当に、何も考えずにこうしてたいなんて言わなくても本当に何も考えてなかった気がする…
馬鹿みたいに楽しい日々だった。
今思うとあの日々は…
幻…だったんじゃないかと思える。
悟も、なにも考えずにこのままこうしてたい…みたいなセリフをあの時呟いたんだな…
ずーっとクマと空見て海に浮いてたもんね…