第40章 scene ■
「え。私ってそんな話してたんだ。
ごめん、意味わかんないね、恥ずかし〜」
「いや?当時は僕もよく分かんなかったけど、今なら分かるよ?それに…その後こうも言ってた。」
"でも、完全に理解できなくても、
完全に愛することはできると思うの。"
レイは少し照れたようにフッと笑ってから五条の手を強く握った。
それに呼応して五条も強く握り返す。
その後・・・
僕はこう言ったんだ。
"人は、人を愛していると思い込んで、実は自分自身だけしか愛していない場合が多いと思う。俺自身もそう思うことがある。だから時々自分を試したりする。"
"それでもいいじゃん。愛することを怖がってたら、何も得られないし。私はね…これまでの人生でずっと、誰かに愛される価値のない人間なんだって思ってた。でも…もっと悪いことがあったって最近知ったよ。私自身が心から人を愛そうとしなかったんだよ。"
あん時の何気ない会話でも、僕はこんなにも鮮明に覚えてる。
またこうして手を繋いで歩くことがあるなんて微塵も思ってなかったし、しかもこうしてまた、その時のことを思い出すなんて…ね…