第40章 scene ■
"時々思うんだけど、
心臓の中を見ることってできないのかな"
"は、何の話ー?心臓の中?"
"心の中のことだよ…"
"…さぁ?医者じゃないからわからん。硝子なら分かるかもな。あいつ医者みてぇなもんだし"
"ふ…そうかもね…"
"そもそもさー、人の考えとか気持ちとか、多くは目に見えるもんじゃねーから。"
"ほとんどの人は、相手の顔色を伺うよね、そういう時。"
"あぁ。それで手に取るように分かるんなら苦労しないもんだ"
"ねぇ…ドキドキすることってあるでしょ?私ね、それって、心臓が外に出たがってる時だと思うんだ
私を脱がせて全部見て、みたいなさ。どうしてこんなにドキドキしてるのか目で見て教えてって感じで、心臓が言ってるんじゃないかなってね"
"・・・なんて返していいか分かんねぇ話すんなよ…"
"ごめんごめんっ…ははははは"
"心臓の中ね…俺だって見えねーから困ってるんだ"
"…私と一緒だね。でも…
そこがいいんだよね、人間ってさ。"