第5章 possession
「ほとんどの人は、相手の顔色を伺うよね、そういう時。」
「あぁ。それで手に取るように分かるんなら苦労しないもんだ」
そう言ってギュッと手に力を込めると、レイも少しだけ強く握り返してきた。
「ねぇ…ドキドキすることってあるでしょ?私ね、それって、心臓が外に出たがってる時だと思うんだ」
五条はなんの話しが始まったんだというように訝しげにレイを見る。
彼女は夜空を見上げて笑っていた。
「私を脱がせて全部見て、みたいなさ。どうしてこんなにドキドキしてるのか目で見て教えてって感じで、心臓が言ってるんじゃないかなってね」
五条は目を見開いてしばらく沈黙した。
「・・・なんて返していいか分かんねぇ話すんなよ…」
「ごめんごめんっ…ははははは」
レイが心底おかしそうに笑い出すので思わずため息が漏れる。
なにこいつ…
冗談なのか本気なのか、いつもわからねぇ。
「心臓の中ね…俺だって見えねーから困ってるんだ」
「…私と一緒だね。でも…
そこがいいんだよね、人間ってさ。」
それにね…
と彼女は続けた。
「完全に理解できなくても、完全に愛することはできると思うの。」
傑が言うように、
この世のものは全て不完全。
完璧な人間もいない。
だけど。