第1章 ruby
その言葉に、夏油も上を見上げたのがわかった。
「私は…満月よりも三日月の方が好きなんだ。ちょうど今の、このくらいのやつがね。」
「…なんで?」
めずらしいことを言うなと思ってレイは聞いた。
チラリと横目で夏油を見ると、耳は柔く掴んだままだが、夜空を見上げて小さく深呼吸をしている。
「三日月の方が、不完全という感じがしていいだろう?…皆、この世のものは全て不完全なのさ。」
「じゃあ…完璧になるにはどうしたらいいの?」
「…自分の力じゃ絶対に埋められない不完全な部分がある。それはきっと、自分以外の誰かの力が必要なのさ。だから完璧な何かはこの世に1つも存在していない。…あの五条悟だってそうだろう?」
その言葉に、レイは小さく笑った。
「確かにね!ほんとその通り。」
五条悟という同じクラスの生徒は、確かにとても強くて優秀で、しかも外見もかなり良い。
だが、中身があまりにもクソだ。
同じクラスの家入硝子ですら、クソと呼んでいるし、夜蛾先生も彼と接する度に頭が痛くなると言っている。
やはり完璧人間などこの世にいないのだろう。
神なんてのも、この世に存在しないのだから。