第39章 dignity ■
「そもそもさ…そんな簡単に…
忘れられるわけないんだし……
無理させて…ごめんね…」
「…悟……」
レイの中にもかつての伏黒との会話が反芻された。
"ね…伏黒くんはさ、いつまでも何かを引きずっている女の子って、どう思う。いつまでも過去にしがみついて、今が見られない人って、どう思う。"
"かわいそうな人だなって、思いますよ。
誰にだって、忘れられない過去の一つや二つ、辛い過去の一つや二つはありますよね。でも…俺は俺自身に、いつも言い聞かせてることがある…
……過去の経験抜きでものを考えろと。
過去にこだわるやつは未来を失うんだと。
だから…俺は毎日…新しい自分として生きてる…"
私のかつての恋は、間違いだったかもしれないけど、間違いじゃなかった。
悟とこんなふうになれたから、そう思える。