第39章 dignity ■
「洗ってあげるね?」
「…容赦ないんだから、もう…」
五条はレイ専用に置いてあるシャンプーを泡立て髪を洗い始めた。
その丁寧な指使いが心地良くて、つい吐息が漏れる。
「悟って美容師向いてるんじゃない」
「ふはっ、せっかく教師やってんだからそっち向いてるって言ってよ」
「そう思ってるよ。」
思いがけないその即答に、五条は目を見開く。
「今日、恵くんに稽古つけてるとこ見て、すごく…驚いたし、嬉しかった。あぁ、悟ってちゃんと先生なんだなって。悟は誰よりも素敵でかっこいい、良い先生だよ。」
目を閉じたまま、静かな口調で、それでもハッキリと言ったその言葉は、五条の動きを止めてしまった。
「初めて…そんなこと言われたよ…」
「えー、そんなことないでしょ〜クスクス」
これ以上好きにさせてどーするつもりだよレイ…
正反対のことしか言われてこなかったんだからね僕はっ。
レイは相変わらず、相手が欲しい言葉を無意識に発する天才だね。
だから皆、レイのこと大好きになっちゃう。