第39章 dignity ■
まれに見かけるその顔…
ああ、
あのときと同じ。
あのときの…
遠ざかって行く背を思い出す。
心底分からない。
たまにこういう雰囲気を醸し出すアンタが。
そういうアンタを、
どう思ってるか…
こんな自分の感情も
心底わからない。
ただ、わかるのは、
この人の今まで背負ってきたものは、
この人にしか受け止めきれないほどのもので
この人の心が
馬鹿みたいに強靭で
それでもたった一つのことで
いとも簡単に壊れるほどに
脆く儚いってこと。
あの春、この人が一人
ボーッと見つめていた桜みたいに。
要するに……
いくら最強と謳われていようと
この人もただの1人の男に過ぎないってこと。