第39章 dignity ■
「伏黒くんは、向上心があって偉いね!
きっと大切な人が沢山いるんだね。」
「別に…俺はそんなに善人じゃない。」
「善人か……そんな人っているのかな…」
突然トーンが低くなり、俯くレイを訝しげに見る。
「悪人も…本当にこの世にいるのかな…
私にはわからない…」
そう言って、レイはペンダントを握った。
伏黒は察したように目を細める。
「あの人も…善人だったのか悪人だったのか…
今となってはどちらでもなかった気がするし、
私だって…一体どちらを肯定しているのか…」
独り言のように呟くように言うレイに、伏黒は言った。
「因果応報は全自動じゃない…呪術師なんて、そんな報いの歯車の1つに過ぎない。俺には許せない奴がたくさんいるし、嫌いな奴も助けたくない奴もいる。だから俺は、不平等に人を助けてる。でもレイさんは違うでしょう?」
「え……」
確かに私は…許せない人もいないし、嫌いな人も助けたくないと思う人もいない…
「だからあなたは善人ですよ。」
そう…津美紀みたいに…
"誰かを呪う暇があったら、
大切な人のことを考えていたいの"
あなたも以前、こう言った。
"いつまでも呪いが消えないこんな世の中だからこそ…大切だった人のことを思い出していたいんだ"