第39章 dignity ■
「今度はレイさんが
俺の稽古に付き合ってくれませんか」
「え…」
思いもよらない言葉に、いいのかな…?
と思いいつつ五条を見ると、問題ないよといったような顔で頷いている。
「あ…うん、いいよ?」
「レイもけっこー手強いから頑張ってね、恵。
じゃ〜僕は2人の邪魔しないように出てくね〜」
五条はパラパラと手を振って部屋を出ていってしまった。
伏黒はその後ろ姿を睨みつける。
なんなんだよ、その余裕っぷりは。
あいっかわらずデリカシーねえよな。
見えるところにこんな痣つけるなんてよ。
ほんっと、ムカつくよ。
小1の時、俺の父親と津美紀の母親、それぞれの片親がくっついて蒸発した。
白髪の怪しい高校生(この男)が言っていた。
"君のお父さんさ、禪院っていういいとこの呪術師の家系なんだけど、僕が引くレベルのろくでなしで、お家出てって君を作ったってわけ。
恵くんはさ、君のお父さんがとっておいた最高のカードだったんだよ。ムカつくでしょ?"
蒸発資金の謎が解けた。
俺は禪院家とやらに売られたらしい。
あぁ、ムカつくよ。
あんたのそのデリカシーのなさが特に。
でもこのムカつく男が、禪院家の件を帳消しにして俺が将来呪術師として働くことを担保に俺たち2人の高専からの金銭的援助を通してくれた。
何が呪術師だ。馬鹿馬鹿しい。
俺が誰を平等に助けるってんだよ。
「じゃあ、伏黒くん。
どこからでもかかっておいで?」
レイの言葉に、伏黒は顔を上げる。
「……いきますよ」
シュッー
サッー
サッー
くっ…速いっ!!
レイは優しい笑みを浮かべたまま
一瞬で余裕そうに攻撃をかわしまくっている。
その余裕っぷりに、伏黒は早くも息を上げ始める。