第39章 dignity ■
レイは座り込んでいる伏黒の元へつかつかと歩いていき、手を差し伸べた。
伏黒は戸惑ったようにその手を掴み、立ち上がる。
「大丈夫ー?悟に乱暴なことされなかった?」
レイはさぞ心配そうに伏黒の体を見回している。
「はぁ…まあ…平気です。」
そう言いながらチラと五条を見ると、明らかに不機嫌そうな顔で腕を組み出した。
「あ!あのね、伏黒くん、そのっ…
昨夜は…迷惑かけてごめんなさい!!」
深深と頭を下げるレイに、伏黒はたじろぐ。
「っえ…あぁ俺は別に。ていうか、レイさんこそあの後は大丈夫だったんですか?かなり酔ってたみたいだったし…」
言いながら、五条とキスをしていた場面を思い浮かべてしまい、気まずくなって視線を逸らした。
「うん。全然大丈夫。あ…それでね…これ…」
そう言って差し出してきたのは、綺麗に洗濯され折り畳まれたハンカチ。
伏黒がレイの涙を拭いた時のものだ。