第39章 dignity ■
「んんっ…ん…っ…」
舌が割入れられたかと思えば、巧みに舌先で口内のそこかしこをつつかれる。
絡めとるような仕草のあと、何度も上顎や下顎の敏感な部分を柔く舐め取られた。
あまりの快感に体の力が抜けそうになっていると、唇が離れた。
「ふふっ、そんなに安心しきった顔してる場合じゃないよ?」
五条が唾液のついた自分の唇をペロリと舐め、飲み込んだあと、瞬時に噛み付くようなキスを落としてきた。
「っっ!んっ……」
荒々しく口内をかき回し、乱暴に舌を絡め取り、吸われる。
両頬をギュッと包まれ、逃れられないようにされ、何度も角度を変えて口内が犯されていく。
密封された口からは声すら出せず、飲み込みきれない唾液が流れて行った。
すごく乱暴なのに、すごく気持ちがいい…
プロ級のキスだと思ってしまった。
酸素が足りなくなって意識を手放しそうになる寸前で、ようやく解放され、思い切り肩で息を吸う。
五条も少し息を切らしているのが分かる。
恐る恐る目を開けると色っぽく歪んだ表情の五条が口角を上げた。
「ふっ…どれが一番よかった?」
「はぁっ…はぁ…はぁ…わっかんない…
死ぬかと思った…よっ……」
「ははっ、だからどうなっても知らないよって言ったじゃん」
ゆっくりと頭を撫でられ、目と鼻の先で見つめられる。
2人の荒い息遣いだけが部屋に静かに響いている。
五条は呼吸を整えながら愛しいその顔を見つめ鼓動の高鳴りを鎮められないでいた。
ああ……
僕はこの顔が好きでたまらない…
マジやばいよ…最高すぎる…
ちょっと強引に攻めて、恥辱的な言葉で可愛がると、切なく眉をひそめながら懇願するような瞳で見つめてくる。
そこに快感を送り込んだときの、至高ともいえる恍惚の表情、甘美な声、跳ねる身体。
キスだけで、大好きな子がこんなに善がってくれる…
ていうか、大好きな子とのキスだけでこんなにいろいろヤバくなっちゃってる僕に僕が一番驚いてる。
あー…僕ってホント…
呆れるくらいに今幸せ実感してる。
今更、これが夢でしたとかナシだよ?マジで。
100年の呪いから目覚めた眠り姫。
もう二度と、そんな悪夢に戻らせない。