第39章 dignity ■
ふぁっと唇が離れ、五条が口角を上げながらレイの濡れた唇を指でなぞった。
「…んな物欲しそうな顔すんな。もう時間ないから残念ながらお預けかなぁ〜?」
「っ!別にそんな顔してないよ!もうっ…」
「次はもっと激しく乱暴にぐちゃぐちゃに抱いていいー?」
「…っ…な…」
「ねぇ、レイ…」
またギュっと抱き寄せられ、五条の顔が首筋に埋もれる。
香りを堪能するように鼻から深く息を吸い混むのがわかった。
「あ、忘れてた。」
「え?」
「どのキスがいいか。もう決まったよね?」
"いち。…小鳥みたいに何度も優しいキス。
に。…猫みたいにじゃれ合いながらキス。
さん。…オオカミみたいな激しいキス。
…さぁ、お姫様、どれをご所望かな?"
レイは昨夜のその言葉を思い出して顔を赤らめた。
「えっ…と…」
「うん。」
ニコニコしながら返答を待っている五条の唇をジッと見つめる。
「……ぜ、んぶ…かな?」
五条の唇が少し開いたかと思えば、口角が徐々に上がっていった。
「……わかった。どうなっても知らないよ?」
なにか声を発するまもなく、啄むようなキスが降ってきた。
チュッ…チュッ…と時折音を立てながら、本当に小鳥のさえずりさえ聞こえそうなほど儚く優しいキスの雨が降り注ぐ。
それが少しくすぐったくて、ふふっと笑った。
その弧を描く唇も、隙間の開いた唇も、五条はひたすら小鳥のように優しく啄んでいく。
たまに目を開けると、五条の綺麗な青い瞳と目が合った。
「んっ…ふふ…っ…ん…悟っ…」
「ふっ……かわい……っ…」
すると、突然ペロリと舐められる。
ビクッと体を揺らした瞬間、頬に手を添え、もう片手を指に絡ませ繋ぎながら、ぺろぺろと唇全てを舐めとっていく猫のような口付けが始まった。