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walking proud~呪術廻戦~R18~

第1章 ruby


突然夏油の手が頬に触れ、一気に現実に引き戻される。

俯いていた顔を恐る恐るそちらへ流すと、ゾッとするほど美しい…まさにあの時のその顔があり息を飲む。

「…な、なに?」

夏油はフッと笑ってからレイの耳に手を滑らせた。
そしてみるみる眉を下げはじめる。


「痛そう…もう耳ではないな、これは…」


そりゃそうだろう。
ジャリジャリとしかしない感触。
レイの耳は全てピアスで埋め尽くされていて、もはやもう耳ではないかのよう。
まるで宝石の塊…いや、武器の塊みたいな…


「はは…こんなの痛くも痒くもないよ。あの頃の痛みに比べれば…」


その痛みとは、あの頃の心の痛みのことを言っている。
それは夏油にも分かり、口を噤んだ。

「…だから夏油くんは、命の恩人なんだよ。
私を救ってくれた。私は存在してもいいんだと、そう思わせてくれた。居場所を与えてくれて、感情をくれた。」

そうでしょう?
というように真っ直ぐに見つめると、夏油はレイの耳を触ったまま時が止まったように固まった。


「…?」


「だから…私が優しい、って?」


彼の一人称は、誰に対しても"私"
真顔のままポツリと言ったその言葉はとても小さくて、思わず笑って聞き返しそうになった。


「そうだよ。だからこの綺麗な星空の下に連れてきてくれるだけじゃないって、さっき言ったじゃん」


「・・・」


なぜかまだ固まって黙ったままの夏油に、さすがに目を合わせていられなくなってレイは上を向いた。

いつまで耳を掴んでいるつもりだろうなんて思いながら…


「あー…夜空ってこんなに綺麗だったんだね。これも夏油くんいなかったら、一生気付けなかったことだろうなぁ。」
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