第39章 dignity ■
その時だった。
ガチャ
ドアの開く音がし、パッと唇が離れる。
2人同時に横を向き、入口の方向を見ると…
そこにいたのはクマだった。
クマは元々丸い目を見開いて更に丸くしている。
裸の五条が、レイの両手を押さえつけ、覆い被さって身体を重ねている。
その信じられない光景の状況把握に少々時間がかかっているようだ。
「はぁ…なーんだ、クマ野郎か。
今見ての通り取り込み中なの。あっち行っててくれる〜?」
「……てめぇ…おい……なんっ…
これはどういう……まさか目隠し野郎っ…てめっ」
クマは突然毛並みを逆立てはじめ、目を釣りあげたかと思えば、一瞬でその場から消えた。
と思っていたら、いつの間にかレイの上から五条までいなくなっている。
「?…えっ?」
たちまち凄まじい音が聞こえ、上半身を起こして視線を走らせると、タンスの前あたりで取っ組み合いの喧嘩のようなものが巻き起こっていた。
バチンバチンッとクマの攻撃と五条の無下限の跳ね返しがぶつかり合っている。
「っ!!ちょ、ちょっと!」
0.0001秒ほどの目にも止まらぬ一瞬の速さであのとき消えたクマを、五条は同じく0.0001秒でそれを察知して消え避け、2人とも瞬間的に移動して今まさにこの状況というわけだ。
「てめぇどういうことだ!このゲス野郎!!」
「待て待てクマ!僕いまフルチンだよ分かってんの?」
確かに素っ裸の五条の後ろ姿。
レイは唖然とする。
「だからだクズ野郎!許さねえかんなっ!殺してやる!」
どうやらクマは、レイが襲われていたと思っているらしい。