第39章 dignity ■
レイが目を開いた時、目に映っているものが何なのか理解するのに時間がかかり、数秒固まってしまった。
パサっとした白くて美しいまつ毛。
あ…そっか。
昨夜は…悟と……
ゆっくりと顔を離すと、気持ちよさそうに寝息を立てている安らかな寝顔の五条がハッキリと視界に入る。
わぁ…すごく綺麗な寝顔…
こんな顔して眠るんだな…
初めて見るその表情に、思わず頬を緩める。
昨夜も……
あんな悟は初めて見た…
あんなに色っぽくて、セクシーで、苦しげで…
あんな顔も、あんな声も…
今まで全く想像つかなかった……
私は…どんなふうだったかな…
「悟って…こんなに綺麗だったっけ……」
つい触れたくなってしまい、人差し指でゆっくりとまつ毛をなぞり、頬をなぞり、唇をなぞった。
ピクリとも動かない五条から手を離す。
昨夜は疲れさせちゃった…かな…
ごめんね……
五条の剥き出しの肩に布団をかける。
自分も五条もあのあと裸のまま眠ったのだという事実が今更羞恥となって襲ってきて、無意識に自分の上半身を両腕で抱き締めた。
「あは…今更こんなことしても意味ないよね…」
レイは自分の行動に半ば呆れながらも、五条の頬に手を伸ばし、するっと撫でる。
顔を近づけて、額にキスをした。
「…っわ!!!」
突然ぐるりと体が反転し、五条に押し倒されたのだとわかった。
覆いかぶさっている五条の目はカーテンから差し込む光でサファイアのような光を射している。
白い髪も白いまつ毛も1本1本が光に照らされギラギラと輝いている。
「ふ…随分と余裕じゃん、レイ。」
「っな…いいつから起きてたのっ」
「ひ・み・つ。 おはよ、お姫様。」
「お、おはよ…王子様…。」
五条の蒼眼が優しげに細まり、
柔らかい唇が落ちてきて、額に当たった。
ギュっと目を閉じると、そのまま 鼻、瞼、頬、こめかみへと顔中にキスの雨が降り注ぐ。
くすぐったさで、甘い吐息が漏れてしまう。
手首は掴まれたままだ。
うっすらと目を開けた瞬間、獲物を狙う狼のような鋭い眼光とパチリと目が合い、瞬時に唇に重なった。