第38章 voyage ■
「…っ…悟…本気…なの?…」
「分かってるくせに。僕がどれだけ…」
我慢していたのか…
好きだったのか…
欲しかったのか…
その言葉を飲み込んだ後、五条はレイの手をどけ両頬を包み込み、また口付けをする。
唇を舌で縁どりながら割り込ませ、歯列をなぞり、ぐるりと口内を舐めとっていく。
「んっ…んぁ…まっ…さとっ…」
「…ん……」
その蕩けるような口付けに、レイの体は電流が走ったようにビクビクとしなった。
「嫌なら…」
逃げ惑う舌を追いかけるように絡められ、どちらのものとも分からない溢れる唾液が口端を伝う。
「…ほら早く」
互いの息遣いと、淫靡な音が鼓膜を揺らした。
キスの合間に五条の官能的な呟き。
「とめろって…」
半ば強引ともとれる口付け。
酸素が足りなくなり、五条の胸を無意識にグッと押すと、パッと唇が離れた。
「っ……はぁ…はぁ…さと…るっ…やりすぎ…」
「ふっ…今のは…お姫様を100年の眠りから目覚めさせるキスだよ。それから悪夢からも…。」
「……」
「あ…その顔だとまだ完全に覚めてないかな?」
五条の手がするすると首筋を撫で、鎖骨を撫でる。
徐々に下に降りていき、服の上から体を愛でるようになぞられていく。
「悟っ…あのね…私……その…」
レイは大きく深呼吸して意を決したように言った。
「……悟はこんな私でも…いいの?」
だってまだ…私は…
いろいろと…忘れられてない…
おかしくなるくらいに心臓がバクバク音を立てている。
火照る顔を隠すようにギュッと目を瞑る。
すると、優しく髪を撫でられ、小さな掠れた声が降ってくる。
「…100年も待って、まだ待つなんて僕は嫌なんだけど。それに、僕には僕の物語の紡ぎ方がある。」
うっすら目を開くと、刹那げな表情の五条が少し笑った。
「だけどっ…」
「昔も今も、レイはレイだ。
レイは僕にとって、ずっと特別だった。
特別だから…もしレイが許すのであれば僕は…
死ぬまでレイを離さない。」
.