第38章 voyage ■
「ねぇ僕さ、前に、言っちゃいけないこといっぱい言っちゃいそうな気がするって言ったでしょ?」
「……うん。」
「それ、もうひとつ言ってもいい?」
レイは小さく頷く。
すると、五条は耳元に口を近づけ、静かに囁いた。
「初めから…僕にしておけばよかったのに…」
レイがヒュッと息を飲む。
その唇に口を近づける。
「…キスしていいかな…」
「……悟」
「したいんだ…。今度は傑じゃなくて、僕だってちゃんとわかるようなのを…」
レイが頷くのと同時に口を塞ぐ。
触れるだけのキスが一度離れたかと思えば、今度は唇全てを含むような優しいキス。
そして角度を変えて熱い舌が割り入れられた。
「んっ……」
奥から舌を絡めとられ、柔く吸われる。
息継ぎもできないくらいに唇を啄まれ、何度も角度を変えて口内を蹂躙される。
初めて五条とする、ディープな深いキス。
ゾクゾクとした快感が、全身にまで広がり、鳥肌がたっていった。
「っ……は…… レイ?…平気?」
「…はぁ…はぁ…ん…平気じゃ…ないよ…」
「……嫌だった?」
レイは赤らんだ目を逸らして首を横に振る。
眉をひそめて懇願するような色気のある五条の表情。
見たことも無いそんな顔で目と鼻の先で見つめられれば目を合わせていられなくなる。
悟は…本当はこんなふうなキスをするんだ…
正直びっくりした…
でも…どうしてだか、嫌ではない…
「…じゃあもう一度していい?」
「え……っ…」
「まだ僕のお姫様になる気はない?」
「…それ…は……」
目を逸らしたまま戸惑っていると、五条の唇が首筋を這った。
「っあ!…ん…ちょとっ…さとっ…」
ちりっとした刺激にピクっと体が跳ねる。
きっと……付けられたのだとわかった。
全身の力も抜け、どうしたらいいか分からず口に手を当てたまま固まることしかできない。
そんなレイを五条は真剣な目で見下ろす。
「や……そんな顔で見ないで…」
「ふっ…それ僕のセリフ。」
熱の篭った、まるで獲物を狙う肉食動物のような眼光。
それがとても真剣なのに非常に色っぽく映り、
レイに一気に緊張感が走った。