第38章 voyage ■
「…空…だったよ。ずっと前から…あの時から…
一番私のことを…見守ってくれてる人…」
いつ誰と何処で何をしていても、
味方でいてくれたし支えてくれた。
悟を見ると、空を見るみたいに元気になれたし
どんなに辛い時も、生きようって思えた。
そう、思わせてくれた。
空みたいにずっと、見守っていてくれた。
それに…
「悟は私の物語をずっと…紡いでいてくれた。」
五条は切なげに笑みを浮かべてレイの髪を撫でた。
「うん…でも…ごめんね……
……失敗しちゃったんだ、僕。
だからさ…いろいろ変更したいわけ。シナリオをね。
ていうか、新しくしたいわけ。
もう失敗は許されないんだ。」
フッと笑ったその表情がとても美しく煌々と見え、レイは目を見開いた。
「だからさ… レイ……僕の……
お姫様になってくれる?」
「……え……」
「もう正直待ちくたびれちゃったよ…
レイに対しても…自分に対しても…」
五条の指が額に触れ、優しく髪を流した。
レイは目を見開いたまま固まる。
「あとさ、もう1つ謝らせて。」
「…な、なに?」
「レイのファーストキスは、多分僕。」
「……え?」
「それから僕のファーストキスも、レイ。」
「………っ」
「それから…あの時は……
置いて行っちゃってごめんね。
もう…置いて行かない。離さないから。
何があっても。」
レイは目を見開いた。
あのとき…
あのバス停でのこと…?