第38章 voyage ■
「それに……
あの子の飼い主は傑じゃなくてもいいでしょ?」
ついに目を見開いた傑の手が、僕の服を掴んだ。
「っ…なあに?こういう所だけカッコつけるのおかしくない?」
「悟…キミは…ちょっと言葉がすぎるぞ…」
「いや、傑の本音を吐露してやってるだけじゃん」
「少し黙れよ悟…」
僕は乱暴に傑の手を掴みおろした。
「なら男らしくもっとしっかりしろよ!
お前は王子様なんだからさ!」
「……?」
「王子は姫を助けたあと、どうすんの?
そのまま放置しとくわけ?そんな物語聞いたこともないね。
ちゃんと最後まで責任持てって言ってんの!
王子が行動しねぇと物語進まねぇんだよ!」
「………わかったよ。(微妙にわからないけど)」
「…よし。完結までしっかりやれよ。ちなみに話の途中でライバルや敵が現れんのは普通の流れだから覚悟しておけよ。(たとえば俺とか)」
「?……わかった。……なぁ悟?」
「あ?」
「……糖分足りてるか?」
「・・・」
「飴食べるか?最近君のためにも自分のためにも持ち歩いてるんだ。」
「……食べるけどさ…。」
こうして王子様とお姫様は結ばれました。
チャンチャン♪
ー Happyend ー
にはならなかったね。
それはやっぱりどこかでシナリオを間違えた僕のせいかな?
でも僕は初めてお姫様に出会ったあの頃からずーっと、
"媒介者"でもあるし、"空"でもあるんだ。
てことで、次の脚本を考えなくちゃいけない。
次こそは、絶対に上手くいく物語を。
悲し涙を流させない話を。
絶対に確実に、幸せになる物語を。
もう間違いは許されない。
だから僕は……
選んだ。決めた。誓った。
初めから…そうすればよかったんじゃないの。
つまり
僕はやっぱり脚本家は向いてなかった。