第38章 voyage ■
「やっぱり首輪がついていたし、絶対に飼い主が見つかるはずだと思ってたんだよ〜。良かったぁ〜」
「… レイは首輪がついたペットでも、飼い主がいるわけでもないからね?」
「え?」
あ、やべ。
つい余計なことを言ってしまった。
と思ったけど意味が伝わらなかったみたいだ。
「あ、それより…五条くん大丈夫?
なんか最近…疲れてない?」
「えっ…」
心底心配そうな顔。
こんな顔を誰かに向けられたのは、正直僕は初めてだった。
「いつも笑顔だし明るいからさ…
たまに心配になるんだ。無理してるんじゃないかって。」
誰も僕を気遣ったりはしない。昔から。
それに僕自身も気遣われるのは鬱陶しいことだと思ってた。
でもこの時初めて他人にそんなふうに労るようなことを言われ…僕は内心激しく動揺した。
マジでやめてくれ。
そんな顔してそんなことを言うな。
いいか、それ以上は絶対やめろよ。
厄介な感情が湧いちまうだろ…
ある日、任務から戻ってきた傑が呪霊を飲み込んだため具合悪くなって吐き気を催していた。
ちなみにこんなことはよくある。
その光景を初めて見たレイは、案の定驚愕し、狼狽していた。
「…っだ、大丈夫?!夏油くんっ?」
「うっ…あぁ、大丈夫だよ、ふふ…
気にしないでくれ…」
よろりとよろけて口を押えている傑をレイが支え、背中をさすっている。
「傑〜、飴食べる?あ、チョコもあるよん」
「い…いや…遠慮しておく…」
「夏油くんっ!吐きそう?トイレまで歩ける?」
「…っ…ぅ……」
「っあ…夏油くん、はい!ここに吐いて!」
なんとレイは自分の両手を、しゃがみこんだ傑の前に差し出した。